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事例 遺産分割協議書に相続人全員の印鑑がもらえないため、
都市銀行に訴訟を提訴、自分の相続分の払戻を受ける

状況

 依頼人A子さんのご主人が亡くなった、子供はなく、ご主人の父母・祖母も亡くなっているため、法定相続人はA子さんとご主人の兄弟姉妹・甥姪の10人でした。
相続財産は○○銀行の定期預金(自動継続)の○○○万円。遺言書がないため、A子さんがこの定期預金の全部を相続するには、相続人である兄弟姉妹・甥姪全員の承諾(印鑑)が必要になる。ところがそのうち一人は行方不明、一人は痴呆症、もう一人は外国に居住していて手続きに非協力だった。話合い・調査が難航しているうちに、こんどは、依頼人のA子さんが亡くなってしまった。
A子さんの相続人は弟と妹の2人、この2人がA子さんの権利をさらに相続することになった。

提案及び解決策

遺産分割は遺産分割書に全員の印鑑が押されない限り成立しない。
印鑑が貰えない相続人の持分を除いての残額だけの払戻を請求することはできない。そもそも、このような遺産分割協議書は無効であるからである。そこで本件では印鑑を押すことが出来ない相続人にを除いた他の相続人から相続分をA子さん譲渡する「相続分譲渡証書」を頂くことにした。7人から相続分譲渡証明書を取り付けた。A子さんの相続分は自分の従来の相続分(4分の3)と譲渡された分を合せて64分の54になった。

 それでは、このこ譲渡証明書を銀行に持ち込むと、A子さんの持分(64分54)は払戻ができるであろうか、最高裁判例は「銀行預金や生命保険還付金等の可分債権は、相続により法律上当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を取得することができるとしている(最判昭和29年4月8日)」

 しかし、銀行等金融機関は別世界、世間の常識、法律が通用しない。相続人間のトラブルに巻き込まれることを恐れて、相続人全員の印鑑がなければ、その人の相続分だけの払戻にも応じない。そこで当該銀行を被告として、預金返還請求訴訟を提訴することにした。

 ところが、準備中にA子さんが亡くなられてしまった。
A子さんの相続人は弟と妹の2名、また始めからやり直しかた思いきや、そうではない。この相続人2名がA子さんの権利(64分の54)を2分の1ずつ相続するわけである。 こんどは妹さんの権利を兄に譲渡(有償)して兄が、相続した(64分の54)の返還請求訴訟を提起した。被告の銀行は他の相続人に訴訟告知(※)した。しかし行方不明の相続人な訴訟告知できなかった。そして被告銀行側にもこれといった反論もなく終結になった。
 だだ、本件定期預金は自動契約されていて満期日が到来していないため、「被告は原告に平成00年00月00日(満期日)が到来したときは000万円支払え」との将来給付の判決が下された。

 

「参考」
訴訟告知(*)とは当事者(今回の場合は訴えを提起した依頼人とかんぽ生命)以外に当該訴訟の結果に重大な影響を受ける第三者に対して、訴訟が提起され、どの程度進行しているかを知らせ、その第三者(今回の場合、相続人である先妻の子供2人)にも、この訴訟に参加させる機会を与える制度です。
もし、訴訟告知をされても、その訴訟に参加しなかった場合は、その判決の効力はその第三者にも及び、後で不服を述べることはできなくなります。銀行等の金融機関は、このように、相続人の一人から、訴訟を起こされた場合、必ず他の相続人に訴訟告知をします。
なぜなら、後になって、実は遺言書がある等主張されたらたまったものではないためです。

同様な事案で悩まれている方へ

  銀行預金等の可分債権は、相続により法律上当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を取得することができるとするのが最高裁の判例(最判昭和29年4月8日)です。
  それにもかかわらず、銀行等は相続人間のトラブルに巻き込まれるのを避けるため相続人全員の印鑑がなければ払い戻しには応じないのが現状です。
また、相続財産が預金や還付金等の可分債権だけの場合は遺産分割調停にもなじみません。
そこで、相手方金融機関等を相手に、自分の法定相続分だけの返還請求の訴訟を提起することになります。
この手の訴訟は相手側金融機関の対応もよく、判決が出れば速やかに支払ってくるのが現状です。
当事務所は解決するために訴訟を提起することをためらいません。同様の案件でお悩みの方、他の事務所で断られた方は、ご相談ください。

訴訟告知書

判決文

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